T型,K型熱電対の例をあげて説明します。 物性は次の通りです(参考文献:理科年表ほか)
----- T 型 熱電対 -----
《コンスタンタン》 銅55%Ni45%の組成からなる合金
融点は 1225-1300 ℃
電気抵抗は 500 nΩ·m(20℃) 490nΩ·m(0℃)
比熱は 0.41 kJ/(kg·K) 0.098 kcal/㎏・℃
熱伝導率は 19.5 W m-1 K-1(23℃)
《 銅 》
融点は 1084.62 ℃
電気抵抗は 16.78 nΩ·m (20℃) 15.5 nΩ·m(0℃)
比熱は 0.379 J/g・K 0.0915 kcal/㎏・℃
熱伝導率は 401 W·m-1·K-1 (300 K)
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----- K 型 熱電対 -----
《アルメル》 Ni94%,Al2%,M2%,Fe,Si等からなる合金
融点は 1315-1390 ℃
電気抵抗は 29-33 μΩ・cm
比熱は
《クロメル》 Ni 80%,Cr20%
融点は、1420 ℃
電気抵抗は 70-110 μΩ・cm
比熱は 0.106 kcal/㎏・℃
熱伝導率は 19 W m-1 K-1
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T 型 熱電対において、融点に注目すると、銅の方がコンスタンタンより溶けやすいのですが、銅は電気抵抗がコンスタンタンより1桁以上小さいためスポット溶接時の電流による発熱が少ないのです。結果として銅はコンスタンタンより溶けにくいということになります。 そこで熱電対の銅素線に接する電極の極性を(+)としそこでの発熱量を大きくします。また、コンスタンタン側では、電極との間の熱抵抗を下げ(電極の熱容量を大きく、接触面積も大きく)、ペルチェ効果による吸熱側となるよう電極の極性を(-)側とします。
K 型 熱電対について、上のT型と同じような視点で物性を眺めてみると、クロメルは融点はアルメルより高いが、電気抵抗もアルメルより高く発熱しやいなど、アルメルとクロメルは溶接時の温度上昇要因にT型ほど大きな差がないことが解ります。
【T型熱電対(銅・コンスタンタン)の接点溶接における配慮】
T型熱電対では、コンスタンタン線側が溶接時に発熱が大きく、銅線側の発熱はほとんどありません。そのため銅とコンスタンタンが溶接される前に、コンスタンタンが溶断してしまいます。これがK型熱電対の溶接に比べてT型熱電対の溶接を難しくする要因です。上の繰り返しになりますが、対策として①コンスタンタン側に接触させる電極の放熱効率を上げ、②コンスタンタンと電極との間で発生する熱量を下げるよう配慮することです。具体的に①は、熱伝導率が大きく熱容量も大きな電極を用いること、②はペルチェ効果を考慮してコンスタンタン側の電極が吸熱になるようスポット溶接機の青ケーブル(-)側を接続することです。また、0.3mm以下の太さでは、溶接を2回に分け1回目は電圧を低めに設定し、2回目でコンスタンタンが溶断しない範囲で高めに設定する方法もあります。1回目の溶接で電気的に接続されるため、強度を上げるための2回目の溶接で、スプラッシュが発生しにくくなり、溶断する確率も低下します。
発熱・吸熱について不明な金属においては、極性を反転してどちらが良いかをみてください。 |